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アンケート企画 2位「えろえろ」でスクツナ ロジータミコーレ 前編 01 |
2009.9.16 |
出逢ったその日、その時が、二人の始まりだった。 唐突に仕掛けられた口付け。 その触れ合った唇の温かさ、交わる吐息の甘さを、今でも鮮明に思い出すことができる。 濃厚な氷菓の甘酸っぱい果肉の味と、冷えた口内を探る柔らかな舌の熱。 それは、手の内から滑り落ちた氷菓のことも、今日のお天気も、周囲の景色も好奇の視線も、なにもかも、なにもかも、綱吉の意識から消し飛ばすほどの衝撃で頭を揺さぶった。 ただ、目の前にいる男の存在だけが、鋭い光のように焼きついて。 「オレのものになれ」 会って間もない男の唐突な行動と直情的な言葉は、初心な綱吉を大いに戸惑わせ圧倒した。 その真っ直ぐに向けられた双眸は、綱吉の意識を捉えて放さない。 「イヤかぁ?」 むしろ、望んでいたのだろうと、思う。 男の強引な行動にも、口付けられた唇にも嫌悪を感じるどころか、高揚する気持ちに応えるように鼓動が高く大きく鳴り響いて、今にも胸を裂いて飛び出してきそうなほどだった。 だから、綱吉は赤く染まった両頬を包み込む男の、その手袋越しの大きな掌に己の手を重ねた。 そっ と。 もっと、もっと近くに男の体温を感じたかった。 「イヤじゃない、です」 唇を重ねた瞬間に、既に二人の気持ちは重なっていたのだ。 まるで、それが運命であるかのように。 * * * 以来 恋人として付き合い始めたスクアーロと綱吉は、今まさに蜜月の真っ只中にあった。 平日は二人並んで街中を遊び歩き、週末ともなれば郊外まで足を伸ばす。 当地の観光など楽しんだ後には適当な宿泊施設へ宿泊、そのまま朝まで共に過ごすこともある。 ―――そんな、ある土曜日の夜のこと。 スクアーロと綱吉は、例によってホテルの一室で事後の余韻に火照った身体を抱き合って睦言などを楽しんでいた。 「なぁ、綱吉……」 スクアーロは、夢うつつに陶酔した表情を浮かべた恋人の耳朶に何事かを囁いた。 恥ずかしそうに小さく頷いた綱吉の、その朱に染まった頬から耳朶へ唇を滑らせ、その汗ばんだ背中から形の良い小尻を好色な手付きで撫でたスクアーロだったが、白濁の蜜に濡れそぼった蕾に指先を沈める段になって不意に手を止めた。 「そういえば、お前……」 「なに、どうした の」 二度目の性行為を求めてきたスクアーロの悪戯な指先が不自然に動きを中断したことに、綱吉は困惑しながら男の顔を見上げた。 訊ねる声も、自然と遠慮がちに小さくなる。 「スクアーロ?」 「お前よぉ、今日も、そうだったが。……最近、オレのとこに来る時間が遅くなってねぇかぁ? 普段なら、この時間帯だと、しっかり三回目に突入してるはずだぁ。なのに今日は、やっと二回目だぜぇ……」 「じ、時間なんて計ってんの!? そっ、そりゃ、遅くはなってる、かもだけどっ」 授業の合間にある休憩時間にはスクアーロへのメールを欠かさないし、放課後ともなれば真っ直ぐにスクアーロとの待ち合わせ場所へ向かう事が綱吉の日常となっていた。 それが最近は、メールもお座成りになり、放課後の待ち合わせ場所にも遅れてやってくる始末だ。 「どういうことだぁ? まさか、浮気してんじゃねぇだろうなぁあ。もし、そうなら―――……相手の奴、細切れに切り刻んでやるぞぉ」 「なぁっ!? バカッ、そんなわけないだろ! ただ今度、ちょうど一週間後に学校で文化祭っていうイベントがあるんだよ、その準備で放課後も忙しくて。だから、ごめん、今度から遅くなるときは連絡するようにするから」 「……ブンカサイ、だとぉ? ハッ。そんなものが、オレとの時間より優先するようなことかよ」 「そんなものって……だって高校に入ってから初めての文化祭なんだ、比べられないよ。でも、ねぇ、オレのクラスは軽食喫茶するんだよ、一般の人はチケットがないと校内に入れないんだけど、スクアーロの分はちゃんと用意するから。だから、当日はスクアーロも」 むっつりと押し黙ったスクアーロは、苦々しい顔をして下敷きにしていた綱吉から身を起こした。 そして、一言。 「……萎えた」 「ええっ!? ちょっ、あの……す、スクアーロッ」 「―――先に風呂もらうぜぇ、頭 冷してくる」 平静な声からは、なにかしらの感情を押し殺そうとしている様子がありありと窺えた。 何が気に入らなかったのか。 困惑する綱吉に返事を返さないまま、スクアーロは大股で浴室へと消えた。 そして、この日以来。 スクアーロは、綱吉が僅かでも文化祭の話をしようものなら不機嫌に顔を顰める様になってしまったのだ。 |
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